『あのころの未来』

あのころの未来―星新一の預言

あのころの未来―星新一の預言

 最近、星新一ブームなのかな〜。同じ作者の『星新一 1001話を作った人』は今年、日本SF大賞を受賞したそうだ。こちらは図書館で予約して最近やっと回ってきて、半分まで読んだところで返却期限が来て返してしまい(汗)再度予約を入れたところだ。星新一が30年以上も前に描いてきた未来、それが今なのか??遺伝子工学や環境破壊が進んでどんどん人間の人間としての持ち味が薄れてきて、自然も破壊されて、戦争で人をどれだけ効率的に殺せるかという科学だけが進んだ世界。それを星新一は本当に描いていたのか??確かに、星さんのキレのいいショート・ショートではよくブラックな結末が用意されていたのだけど、「いや、そんなことはない、人間はそれほどバカじゃない」と思って読んでいたのだが。う〜ん・・。星さんもきっと、そんなことはない、それほど人間はバカじゃない、こうやって警告しておけばそんなことはしないだろう、と思って書いていたのではないかと思う。
 膨大な数の作品群の中で、「ボッコちゃん」や「おーいでてこーい」などの超有名な作品のほかに、個人的に記憶に残っている作品がいくつかある。「テレビシート加工」は、その当時、タンスみたいに家具調だったTVが、紙状に薄くなってポスターのように壁に飾られている世界を描いた作品だった。今、TVは薄くなっている。有機ELディスプレイなどはまさにこの「TVシート加工」に迫るものだろう。あと、家族を主題にした作品(題名失念しました・・)で、家がまずあって、そこに父・母・子などの構成員がいて、その一人が家を出、他の人間がその家に来て、自然に家族の一員となり、また次の家族の一人が家を出、他の人間が家族となって家に入ってくるという話があった。どの本に入っていた話だったか、全く覚えていないのだが。これは何を意味したのだろうか。・・思うに、星新一は膨大なショートショートを遺し、そのほとんどは未来に対する苦言であり提言であり、こうなってはいけないという助言であったのだろうけど、どこかで、思いつきというか、その話自体の面白さを追求していたのではないかと思う。全部が未来への提言ではなかっただろうと思うのだ。だって、そうでなければ、これほど楽しくなかっただろうし、子どもの頃読んだのに、これほど大人に(中高年に)なってまで心に残っていないと思うのだ。