『狼たちの月』
- 作者: フリオリャマサーレス,Julio Llamazares,木村榮一
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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スペイン内戦についてもほとんど知識がなかったので、wikipediaなどで調べたりしてみたんだけど、ヨーロッパの歴史って今ひとつよく分からない(涙)でも特にそれほど教科書的知識がなくても十分、味わえると思う。
食料を確保するためや、逃げるための資金を得るために、殺人まで犯してしまう彼ら。この辺りは佐藤亜紀の『ミノタウロス』に似ている気がするが、『ミノタウロス』ほど筋書きがドラマティックなわけでもなく、登場人物の心情も、自然描写と合わせて淡々と綴られていく。夜の内蔵を破って、とか、自然を擬人化する表現が多く出てくる。それがいっそう、登場人物たちの孤独感を際立たせているように思えた。
アンヘルの家族も迷惑を被って、連行されたり暴行を受けたりするのだが、それでも何かと手助けしてきた妹のフアナが、父の臨終の際に彼に言い放った言葉はとても辛かった。お願いだから、ここから出ていって!・・言う方も言われる方もこれほど辛い言葉はない。
「ほら、月が出ているだろう。あれは死者たちの太陽なんだよ」
かつて父が語った言葉のように、夜の狼となって地を徘徊し、絶望だけを友として、ほとんど廃人のようになって、なお生への情熱を失わないアンヘルの姿は壮絶だった。生への執着の強さに感動した、などと安易に口に出来ないような悲壮さだった。
これが処女長編って、すごい作家もいるものだな〜・・。