『終わりの街の終わり』
- 作者: ケヴィンブロックマイヤー,金子ゆき子
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2008/04/24
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 35回
- この商品を含むブログ (20件) を見る
そんな街を舞台にした小説だ。核となるのはコカ・コーラの(って実名で訴訟とか起こされなかったんだろうか、と心配になった)企業戦略で、同僚のジョイス、パケットと共に南極大陸に派遣されているローラという女性。死者たちの街と、南極のローラの章が交互に語られていく。
死者の街の中心人物は、ルカという新聞記者で、生きているときにローラと一時恋人どうしだった男。彼が死者の街で出会う女性がミニーで、彼女はローラの幼なじみだった。このように、二つの話は複雑に絡み合っている。ルカとミニーが出会うときに、ミニーが読んでいた本がブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』(本文中では『悪魔とマルガリータ』となっているけどたぶん同じ本だろう)で、最近読んだばかりなのでちょっと嬉しかった。
話としてはわりと分かりやすかった。最後はちょっとあっけなくて拍子抜けって感じだったのだけど、細かいエピソードで忘れ難い味わいのあるものが多かった。ルカが風船を放してしまった女の子に届けてあげる場面だとか、ローラのクレバスに落ちて死にかけた場面だとか、あと、パケットが幼くして死んでしまった兄の、死者の街での昔の住居を訪ねる場面だとか・・。一瞬にして命を奪われてしまった人の、その後あったかもしれない人生を、親とか兄弟とか、どうしてもあきらめ切れない人たちが、こんな風にその人が何年もその人らしく過ごしていたなんてことを聞いたりしたらさぞかし慰めになるだろうな、とか思ってしまった。あ〜、小説だからだけど、こんなことが本当にあったらいいだろうな・・。
この作者は1972年生まれ。解説によると、アメリカでは30代の若い世代のSFとか他のジャンルとかを超えた新しい文学の流れが盛んになってきているらしい。楽しみだなぁ〜。