『魚舟・獣舟』

魚舟・獣舟 (光文社文庫)

魚舟・獣舟 (光文社文庫)

 あちらこちらで評判がいいので、買って読みました。帯に「SF史に永遠に刻まれる大傑作!」とあって、本当にそんなにすごいのかなぁと半信半疑で読み始めたところ・・。いやー、本当に面白かった。期待以上でした。特に表題作と「くさびらの道」は最高に気に入った。
「魚舟・獣舟」
 ヒトゲノムと異形の生物と。魚舟と呼ばれる生物が生まれるメカニズム、そのアイディアがあまりに魅力的だったので、ストーリー自体はあんまり記憶に残らなかったくらい(汗)。同じ設定で長篇も構想中とのことで、さらに楽しみだ。
「くさびらの道」
 くさびらって何のことだろうと検索してみたら・・、そうだったのか〜。忌み言葉としても使われるようだ。寄生茸に食い尽くされる病に冒されて死んだ人間がさらに・・。恐ろしい結末なのだけど、妖しい美しさに満ちた珠玉の短篇。
「小鳥の墓」
 長篇『火星ダーク・バラード』の登場人物の前日譚ということ。『火星〜』は単行本が出てすぐ読んだはずなのに、何も覚えていない(汗)ひどく陰鬱な話だったような・・。なので、全く何の予備知識もなく読んだ。物語そのものは面白くて、一気に読めてしまったのだけど、主人公の死に対する考え方というか向き合い方が、どうも引っかかって、釈然としなかった。死を不必要に礼賛しているような・・。タイトルになっている出来事が、直接の原因という設定なんだけど、その程度のことで、ここまで死に拘るようになるかな〜。相方の勝原の方がよほど感情移入できたし、興味を惹かれた。で、どうしても『火星ダーク・バラード』を再読しなくては、と思った。文庫版はだいぶ改稿されて別バージョンになっているそうだから、なおさら。