9月に読んだ本。

2012年9月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:5030ページ
ナイス数:94ナイス

ブルックリン (エクス・リブリス)ブルックリン (エクス・リブリス)感想
細かい心理描写がとても巧みなので、さほどの事件も起こらないのにぐいぐい引き込まれ、気がついたら読了していた。序盤の、故郷アイルランドの田舎町での商店主の功利的な態度や主人公の母や姉との距離感、アメリカに渡る船でのひどい船酔い、初めて故郷を離れて陥る虚無感・・。どれも鮮やかに情景が浮かぶ。やっと慣れた頃、思いがけない展開で故郷に戻ることになり、アメリカの生活を思い出すと、まるで夢だったかのように急速に実感を失っていく。クライマックスのこの辺り、すごくリアリティがあって、最終的にどうなるの?とページを捲る手が
読了日:9月3日 著者:コルム トビーン
迷宮迷宮
読了日:9月5日 著者:中村 文則
夜毎に石の橋の下で夜毎に石の橋の下で
読了日:9月10日 著者:レオ・ペルッツ
屍者の帝国屍者の帝国
読了日:9月11日 著者:伊藤 計劃,円城 塔
私が選ぶ国書刊行会の3冊私が選ぶ国書刊行会の3冊
読了日:9月13日 著者:
無力な天使たち無力な天使たち感想
脈絡のない結末もない奇妙な物語の断片が幾つも語られて、疲れて来た頃、大本になる話がやっと見えて来る。これですっきりしたかと思うとまた、本筋から離れ・・と読者は迷子センターにさえ行き着けない有様に、…けどこれが不思議と気持ち良かった。読み終えても全然読み終わった気がしない。何度でも楽しめそう。
読了日:9月14日 著者:アントワーヌ・ヴォロディーヌ
架空列車架空列車感想
タイトルからファンタジーっぽい話を想像して読んだら全然違って、現代人の抱える虚無感を描いたリアリティ溢れる作品だった。現実からの逃避では片付けられないほど緻密に架空の鉄道路線を構築し、自ら自転車でその路線を時間通りに運行するという徹底ぶり。それが生きる目的と化した頃、大震災が起こり・・。震災で家族や職場というかけ替えのないものを失った人たちの中で、何も失わなかった彼はそこでも疎外感を抱く。掛け合わせて負になる虚数のような。が視点を変えてみると、それでも生きていけるという希望のようなものさえ感じさせた。
読了日:9月14日 著者:岡本 学
かくも水深き不在かくも水深き不在
読了日:9月15日 著者:竹本 健治
わたしの物語 (創造するラテンアメリカ)わたしの物語 (創造するラテンアメリカ)
読了日:9月17日 著者:セサル・アイラ
猿猴 (講談社文庫)猿猴 (講談社文庫)
読了日:9月19日 著者:田中 啓文
無分別 (エクス・リブリス)無分別 (エクス・リブリス)感想
わざと捩れたような文章は、これでも句点等を工夫して読み易くしたものだそう。次第に慣れたのだが、次々と顕わにされていく虐殺の描写には息を飲む思いだった。文章によってその無残な光景を脳裏に刷り込まれる主人公は、次第に心の平静を失って・・。実際に目にはしなくても、言葉によって人は追体験することが出来る。言葉って時に残酷なものだなと思う。悲惨な報告の中にも、一瞬の詩の瞬間を拾い出すことに執心する主人公。その言葉の一片一片が心に突き刺さる。辛い読書だったが、彼が実生活では結構間抜けな一面も見せたのが救いだった。
読了日:9月19日 著者:オラシオ・カステジャーノス・モヤ
クエーサーと13番目の柱クエーサーと13番目の柱
読了日:9月20日 著者:阿部 和重
土台穴 (文学の冒険シリーズ)土台穴 (文学の冒険シリーズ)感想
私的生活30周年を迎えたある日、ヴォーシェフは生活の資を得ていた小さな機械工場を解雇された。・・冒頭からして、堅い文章に萎縮しつつ、何とか読み終えたんだけど、うーん、どれだけ理解できたのか(汗)。新たに得た、大規模な共同住宅を建てる礎となる「土台穴」を掘る仕事。それは人々の希望の灯となるはずなのに、どうみても死の象徴としか思えなくなってくる。途中、登場人物の忘れられぬ女の死の床で・・、など印象的な場面はいくつかあり、その時代の切実な背景を知らぬ身としては、一種の幻想文学的な読み方しかできなかった。
読了日:9月21日 著者:アンドレイ プラトーノフ
文学賞メッタ斬り! ファイナル文学賞メッタ斬り! ファイナル
読了日:9月22日 著者:大森 望,豊崎 由美
ロマン〈1〉 (文学の冒険)ロマン〈1〉 (文学の冒険)
読了日:9月26日 著者:ウラジーミル ソローキン
ロマン〈2〉 (文学の冒険)ロマン〈2〉 (文学の冒険)感想
後半どうなるか分かっていたので、後はどういう経緯でそうなるの?という興味で引っ張られて読み進んでいった。・・で、経緯とかなかった(汗)牧歌的な雰囲気、絵に描いたような美男美女のカップル、あり得ない奇跡的な出来事・・と19世紀の文学を更に極彩色にしたような虚構世界が、一気にはりぼてと化して、崩されていく。それを快感と呼べるほどには楽しめなかったけれど。ロマン、何してくれてんねん、まだするんかい!・・と突っ込みつつ、でもそれも結構長いのだ・・。ほとほと疲れた頃、現れるのはぽっかり空いた深い虚無の穴だった。
読了日:9月27日 著者:ウラジーミル ソローキン
雪と珊瑚と雪と珊瑚と
読了日:9月27日 著者:梨木 香歩
奇貨奇貨
読了日:9月29日 著者:松浦 理英子

読書メーター

 今月はわりと読めたような。『ロマン』はラストの疾走感がすごかった・・小説だからこその、今まで浸ってきた世界がガラガラと音を立てて崩壊していく感覚。怒りさえ覚えるほどの理不尽さで。これは是非、多くの人に体感して欲しいな〜(その後しばらく何も手につかなくなるかもですが 汗)。
 あと賛否両論あるみたいだけど個人的にはすごく好きだった『無力な天使たち』とか梨木さんの『雪と珊瑚と』とか松浦さんの『奇貨』とか、いろいろと楽しい読書が出来た月でした。