『有頂天家族』

有頂天家族

有頂天家族

 やっぱりモリミンは面白いなー。狸版『カラマーゾフの兄弟』??でも根(じゃなくて存在自体)が狸なので、どんなに深刻な事態が起ころうとも、鬱々と悩んだりしないところがまたいい。「なに、これも阿呆の血のしからしむるところだ」で「面白きことは良きことなり!」で終わってしまう。徹底的に楽しめるエンタメ小説である。
 偉大な父・下鴨総一郎の子、矢一郎、矢二郎、矢三郎、矢四郎。責任感だけは強いが器の小さい長兄、井戸の中の蛙として引きこもりを続ける次兄、語り手で面白く生きられればよいと言いながら結構兄弟思いの三男、お子ちゃまだけど、意外なところで役に立つ四男、と、それぞれが精彩を放っている。でもいちばん心惹かれたのが彼らの母だ。どんなにできの悪い子でも、
 「あなたたちがこの世にいるだけで、私はじゅうぶん」「それに、あなたたちは皆、立派な狸だものね。お母さんには分かっているよ」・・この我が子に対する絶対的な信頼・・。泣けた〜。